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現地・現場レポート

IGRいわて銀河鉄道(岩手県盛岡市)

移動手段が原因で、通院の継続が困難な“医療弱者”
「足」の確保は、買い物難民の解消にも寄与


医師不足が社会問題化しているが、医療機関の減少も同様に深刻である。 “町のお医者さん”こと診療所は、2008 年の1年間だけで東京都を含む 23 都県で減少している。2006年以降、入院施設のある病院数も廃業数、新規開業数とも減少に転じている。
病院の経営は楽ではない。総務省によれば、公益性の高い地方自治体が運営する公立病院は約7割が08年度決算で経常損失を出しているという。医師が不足→診療体制を縮小→患者数が減少→行政が補助という負のスパイラルには歯止めがかかってない状況である。

【グラフ】医療施設数の年次推移(各年10月1日現在)
(厚生労働省「平成20年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」より)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/08/index.html
スクリーンショット(2010-08-02 15.54.57).png

生活者にとっては、身近から医療機関が姿を消しつつある状況を意味している。希望する診療を受けようと、選り好んでいられる場合ではないのだ。診療可能な医療機関まで足を伸ばす。時間、コスト負担は覚悟しなければならない。定期的な通院となると、これはもう生活の一大イベントだが、命に関わる以上、省略や我慢には限界もある。

【参考】
・国土交通省「日常生活に関するアンケート調査」
http://www.mlit.go.jp/common/000028508.pdf

・常陸大宮市「日常の交通行動に関するアンケート調査」
www.city.hitachiomiya.lg.jp/kouhou/pdf/kouhou/22/1006/02-05.pdf

どうしても問題は「足」である。マイカーが利用できない、運転から引退した、公共交通の利用が困難な場所に暮らしている、家族や周囲のサポートが受けられにくいような生活者は、通院したくてもできない。特にモータリゼーションが浸透した地方部、過疎地域では顕著で、特に高齢者層には深刻である。同じ日本人ながら生存という基本的な人権が危うい状況が生まれているのだ。

「足」の確保に、行政を中心に公共サービスとして、公共交通機関の利用料金の補助や、デマンド交通の整備などに取り組む自治体が増えている。
全国デマンド交通導入機関連絡協議会(http://www.demand-kyougikai.jp/)によれば、2002年に導入が始まったデマンド交通は、

・高齢者が自由に病院や商店街に行くことのできる交通手段を確保するため民、交通事業者、商工会等、地域の人たちと協議し、巡回バスの3分の1の経費で、ドアtoドアの送迎が可能なデマンド交通を導入した(福島県小高町)
・ドアtoドアの送迎ができるデマンド交通システムを導入併せて民間路線バスや自治体運行バスの見直しを行い、交通サービスが充実したおかげで、特に高齢者の人たちは町内の病院に行きやすくなった(石川県宝達志水町)

といった効果から、全国で40近い自治体に普及しており、今後も増加が確実な情勢である。

本稿で紹介する、通院利用客向け専用サービス「IGR地域医療ライン」(IGRいわて銀河鉄道、岩手県盛岡市)は、自治体の区割りを超えた広域をカバーした、医療の足を確保する交通サービスである。鉄道の持つ定時性・確実性を最大限活かしたプログラムで、特徴は移動の「足」提供のみならず、移動空間・時間において、アテンダントと呼ぶサービス専門のスタッフが利用者に応対・フォローを行う暖かみのあるコミュニケーションと、経営の異なるタクシー会社とのオペレーション連携の定着にある。沿線の岩手県北は、日頃の移動手段にクルマを使っていても、冬季になると積雪や凍結が起こり、安全から使用を敬遠する高齢者が増えているという。そうした事情を踏まえた「IGR医療ライン」の開始がフックとなって、沿線の一戸町はオンデマンドバスとの連携に取り組むなど、沿線地域には欠かせない相互扶助サービスとなっている。

(空間通信「相互扶助のイノベーション」より転載・加筆)




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