現地・現場レポート

中村まちバス(高知県四万十市)


(5)今後の取り組み


DSC_0299.JPG取材時、故障中のまちバスの代行で走っていたバス平成22年3月現在、事業開始から10年の経過で、いくつかの課題のブレークスルーに迫られている。ボタンを掛け違うと、今後の運行継続を妨げてしまうような、厳しい現実に直面している。
何と言っても深刻なのが、システム機器類が、10年の経年でハード面の劣化が現実となっていることである。平成20年夏に起きたシステムトラブルでは、機器の寿命が迫っている実態を関係者全員が痛感したという。しかもシステムを開発したパナソニック(株)は、バスLED機器とデマンドシステムの製造を平成17年1月末に終了しており、その後のメンテナンス期間も終わりを迎えようとしている。メンテナンスを継続するにしても、同社の営業所は高知県内にないため、出張費等が発生して高コストになってしまう。経営理念に「生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与」を掲げるパナソニックである。何とかならないものだろうか。
通信に使用しているNTTドコモのDoPaサービスの終了が平成23年度末に迫っている(http://www.docomo.biz/html/product/dopa/)ことも、悩ましい問題である。サービスを継続するには、通信環境を一新しなければならない。

公共サービスとは言え、市財政への過度なおんぶにだっこ状態を避けなければならない時代であり、市議会では批判的の声もあるのも当然である。そこで利用促進、収益強化のためには、運行エリアの再編や拡大等のテコ入れが期待されるが、これが容易ではない。

まず、国・県の実証実験で構築したシステムを継承した経緯から、実験では満足できても実際の運用では使いにくさがわかってきた。例えば、バス停をひとつ増やそうとすると、システム変更に1000万円もの費用が必要となる。なんとか対応できる範囲で細々と拡充を続けてきたが、現在は抜本的見直しに迫られているわけである。
さらに、路線を変更するとなると、市内の交通関係事業者・団体との合意が必要だが、これにも難航しているという。「中村まちバス」導入前の、市内循環バス路線に該当する運行なら理解できるが、そこを超えて路線を増やすのは、不況下にさらなる“民業圧迫”につながるとの指摘である。さらに中村まちバスの運賃が200円と安価なことも、お客さまをとられてしまうと言う批判につながっているようだ。

四万十市は高知県内で2番目に面積が広い自治体で、中村まちバスが運行していないエリアの方が広い。そこの住民から「うちの方にも来て欲しい」という声は少なくないそうで、市民サービスの充実と、交通事業者との調整で、同市は難しい立場に立たされているのである。
それでも、以上のようなシステム・運営上の環境から、平成23年の7月10日頃までにリニューアルを行う必要がある。同市では新システム導入を踏まえて、検討を進めているところである。

導入前(7人/日)に比較して利用者はピーク時の平成13年度に約6倍(42.5人/日)、最近でも3倍強の規模がある(平成19年23人)。とはいえ、走っている車両を見ると、普通の路線バスと同じ車両で、空席が余計目立ってしまうこともあり、少人数しか利用していないという印象を与えてしまうそうだ。

絶対数は小さいが、「中村まちバス」化が行われなかった場合、従来の循環バスの運行が維持されたかは疑問であろう。モータリーゼ−ション、高齢化、郊外化が進むなかでの中心市街地のにぎわい縮小といった問題を考えると、小さな実績でも、健闘していると見るべきだろう。

(6)明日に向けて


“買い物難民”が明らかになったように、全国の中山間地域は厳しい状況にある。中山間地域において今後消滅する可能性のある農業集落は、農林水産省の調査では全国で1,250カ所あるという。さらに国土交通省の調査では、今後10年以内に消滅するおそれのある集落及びいずれ消滅するおそれのある集落は、2,640カ所存在するとも発表されている。高知県も例外どころかむしろ深刻度は高く、高齢化集落の割合は四国で最も多く、全国平均11.8%の約2倍の規模(農水省、平成19年)に達している。

買い物や通院のための都市部への足に不自由している人が確実に存在している。高知県では、本サイトで取り上げている「ハッピーライナー」((株)サンプラザ)のような買い物難民解消のための移動販売に取り組む民間事業者も存在しているが、そうしたサービスの有無を問わず、「生活の足」の確保が既に伝統的な旧市街、都市内でも起きている現実に驚愕してしまう。

四万十市では、「中村まちバス」の運行を、市街地から周辺地域に延伸、時間距離にして約1時間の生活圏をストレスフリーに移動できる路線の開発を進め、将来は旧西土佐村エリアにもサービスを拡大、市内の交通弱者=生活弱者の解消に実現したいと意気込みを示している。実現には調整事も多く時間もかかるでしょうが、その姿勢を100%支持します。がんばってください。


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