現地・現場レポート
こま武蔵台
3.新しいスーパー
読売新聞をはじめ、各メディアが取り上げていたように、2008年4月の東急ストア閉店によって、団地から最も近いスーパーマーケットが国道299号沿いにある(株)マミーマート飯能武蔵丘店である。閉店した東急ストアより規模の大きい店舗であり、敷地内には100円ショップやドラッグストアも出店、ガソリンスタンドも併設した商業コンプレックスとなっている。
団地からは、江戸時代からの古道に相当する未舗装の山道を、読売新聞によれば自転車で走らせること20〜30分の距離だという。しかしマミーマートの敷地を探してみたが、どこにもこのルートを示す案内は見当たらなかった。敷地内には日高市の観光案内所も設けられていたが、そこの観光マップを見てもそれらしいルートは記載されていない。知る人ぞ知る・・・まさに「こま武蔵団」の住民のための専用道化しているようだ。同紙の記事からは、山越え、峠越えの様相がうかがえるのである。
再度、地図を開いて確認したところ、隣接する西武鉄道の武蔵丘車両基地のちょうど真ん中あたり、線線を越えて、等高線の狭いあたりを団地と結ぶ細い道路を発見できた。マミーマート飯能武蔵丘店の店舗情報ページで表示される地図でも確認できる(http://www.mammymart.co.jp/)。
「西武鉄道 武蔵丘車両基地」を示す看板に沿って進む(1)。基地に休む車両を下に、跨線橋を超えると、車両基地のゲートが見えてくる。その左側、森の中に消えていく小道を発見(2)。どうやら自転車での走行できそうな道幅なので、これが例の山道だと直感、そのまま森に分け入った。すると突き当たりにお地蔵さまを発見、道は左右に分かれている(3)。少々迷ったが、自転車を走らせる幅員のある左の道を選んで先に進む。そこからは完全な山道,上り坂が続く(4)。周囲は完全に森の中、空を見上げれば真っ青な空、耳に入るのは小川のせせらぎと鳥の鳴き声・・・と自然に感動してしながらも、山道を塞ぐように広がった蜘蛛の巣に注意しなければならない。山道の状態だが、木々に隠れたあたりは落ち葉が重なり柔らかさがあるが、大半は砂利や雑草で覆われている。雨天ともなれば小川の状態になってしまう所もある(5)。傾斜が緩んでくると、道の先に家屋の屋根が見えてくる(6)。武蔵台団地の中央通りに出て、ここまで徒歩約20分、野趣たっぷりのミニハイキングは終了である。
しかし門外漢だからハイキングなどと言えるのであって、ここまでの急坂を徒歩であれ自転車であれ、足下の状態からするとのんびり自然満喫どころではない。荷物や自転車に手を塞がれた状態で、転倒に注意しながら慎重にかつ体力の配分を考えながら、上ってこなければならない。荒天時は利用を控えた方が安全・安心だろうが、それでも買い物の必要がある生活者が存在しているのが現実なのである。
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この山道を使わないとなると、国道299号を選択することになる。ところが同線は道幅が狭く、場所によっては歩道が設置されていない。ここを買い物袋に両手を塞がれた状態で歩くというのは、かなりの勇気と注意を要する。実際に走ってみると、歩行者は年齢に関係なく恐怖を感じるだろうと実感できた。現実に痛ましい交通事故が発生しているという。このため改修が行われているが、将来のバイパス計画もあって、全区間の整備は進んでいない。クルマが使えないから歩いて買い物に行く→クルマがないために命のリスクを抱えて買い物に行く・・・厳しい現実である。
武蔵台のなかを走り抜けた印象で恐縮だが、駐車環境に恵まれた住宅が少ないように感じた。当時は世帯に1台が常識だったためだろうか、敷地内に2台駐車が可能な住宅は限られているように見えた。仮に1台のクルマが毎日の通勤に使われるとなると、家人は公共交通または徒歩や自転車で買い物や所用に出かけることになる。ここに郊外型大規模商業コンプレックスが出現すると、買い物は週末に大量に購入するスタイルが定着する。東急ストアの不振は、そうしたクルマありきの生活浸透の影響であったのだろう。やがて町も人も歳をとる。坂の町で、徒歩の外出は億劫になりやすい。ますますクルマ依存が高まっていく。そこでクルマがなくなったら?あるいはクルマが使えるようなコンディションを失ったら?残念ながら私たちは、問題に直面しない限り、なかなか将来のマイナスイメージは持てないのである。