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2010年10月12日
第37回「国際福祉機器展 H.C.R」その1
2010年9月29日(水)〜10月1日(金)の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で第37回「国際福祉機器展 H.C.R」(http://www.hcr.or.jp/exhibition/index.html)が開催された。毎年約500社が出展、10万人以上が来場している高齢者や障害者向けの福祉機器に関する国内最大規模の展示会である。主催者によれば来場者は前回を上回る11万9451人を数えたという。
「生活・買い物弱者解消のためのコミュニケーションフォーラム」では、買い物難民の解消や生活弱者の支援につながる機器類やサービスの発見を目的に、最終日の10月1日に取材を行った。福祉機器展という性格上、基本的には車いすや福祉車両、介護用品、リハビリ機器、高齢者・身障向けの住設機器などが展示の目玉である。実は我々にとってこの展示会は初めてではない。主にモビリティ機器の福祉対応について、毎年状況を見てきた経緯がある。よって、生活・買い物弱者解消に直接結びつくような機器、サービスは限られている、あるいは見当たらないのではないかという諦めもあった。しかし意外なことに、「介護福祉」から「買い物弱者=移動弱者」に視点を変えることで、買い物を諦めざるを得なくなっている人々の光明になりそうな機器、サービスを発見できたのである。
以下に紹介する機器類は、出展者は必ずしも買い物弱者を想定して企画・開発したわけでない。当方の勝手な?思いから適応の可能性を発見できた結果あることを断っておく。
■「安全・軽量・かつ持つ喜びがあるシルバーカー」
シルバーカーとは、歩行車、介護車とも呼ばれる、歩行を補助する伊能を持つ手押し車である。歩行時に、杖の代わりに体を支える機能と、ちょっとした荷物を収入するキャリーバッグ的な機能を基本に、一休みする歳に椅子として使用できる機能も選べる。シルバーカーの名前から想起されるように、高齢者に普及した機器であり、市販の製品のほとんどが高齢者女性を意識したスペック(小型・軽量・収納)を持っている。
国際福祉機器展を共催する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「福祉用具実用化開発推進事業」の助成を受けて大同工業(株)が開発、パナソニック電工ライフテック(株)からの発売が予定されているというこのシルバーカーの特徴は、デザインの革新と機能の高度化にある。見た目はシルバーカーというより、車輪が異様に大きい頑丈そうなキャリングバックという印象だ。
ボディ素材はアルミ合金を使って軽量化と強度を高めている。先端の自動車のようだ。大きな車輪は、5〜15mmの厳しい段差を楽に超えられるという。シルバーカーの場合、段差を意識せずに使えなければ実用には使えないから、これは歓迎すべき性能だろう。ハンドルは無段階での調整が可能で、使用者の体格にフィットできる。さらにハンドルから手を離すと、自動的に後側にブレーキがかかり、その場で停止する「速度抑制機能」が稼働する。坂道の続く町では歓迎したい機能で、勝手に転がって思わぬ事故を起こすのではと心配しなくても済む。また椅子として使う際にも安心できる。
こうした機能を駆使すれば、出かけることが楽しくなると開発者はアピールしている。もちろんその通りだと思うが、実際に触ってみると、シルバーカー市場の中心層である女性高齢者が使うにはやや重く、オーバーサイズのように感じた。また収納も思ったほど入らない。いわゆる日常の買い物における長尺物(ネギ、大根の類である)を扱うには少々苦労するようにも見えた。全体的に高齢日本女性というより、大柄な海外女性が手にしていた方が、プロポーション的にもマッチしているように感じた。買い物弱者は日本だけの問題ではないから、輸出の可能性も検討されてはどうだろうか。
もちろん試作品であり、発売時にはさらに完成度が上がっていると期待したい。なお、NEDOのブースでは実際に触って使い勝手を体験できたが、パナソニックのブースでは展示しているだけの状態で、市販は当分先になりそうな気配であった。