現地・現場レポート

都心と郊外の団地に見る、高齢化の実情

  • (2)百人町エリア

 都心の限界集落の事例として、何度も報道されたのがこちらである。中央線の大久保駅、山手線の高田馬場駅が最寄りの鉄道アクセスとなるだが、団地の中心点となるバス停「団地中央」を目指して高田馬場駅から歩を進めてみた。
 山手線のガードをくぐって、トンネル工事の最中の小滝橋通りを直進していくと、左に団地らしき建物が見えてくる。最も高田馬場駅に近い棟で、徒歩10分程度だろう。そこから、ずっと団地の棟が続いている。都バスの小滝橋車庫が近くなると、新宿や新橋、早稲田方面に多数のバス便を利用できるようになる。棟数の表示は高田馬場側が大きく、大久保側に向かうほど小さくなるが、外観上、数字の大小と建物の新旧は無関係のようだ(第1号棟だから最も古いというわけではない)。

hyakunin01.JPG戸山団地とは表記されていない。「百人町四丁目第○アパート」がサインに掲載していた正式呼称のようである。 戸山公園側と最も異なるのは、こちらは自然に乏しい(ないというわけでなく、一般的な東京都心の水準かもしれない)ことで、集合住宅と密集した住宅街という東京の伝統的な都市風景が続いていく。団地の形状は東西に長く、南北に短い。隣接する小滝橋通りにはいくつもコンビニやスーパーマーケット、飲食店が見られたが、東西に長い構造から、距離的に棟によって買い物の利便性は異なっている。こちらでは、1階に商店が入居する棟は確認できなかった。

 また、住戸数に対して限られた規模でも、賃貸駐車場が用意されている棟が少なくない。賃貸料は場所柄、それほど安くはないだろうが、日頃からクルマで動く人にとっては、都心ぐらしでマイカーライフもできる。願ったり叶ったりだろう。
 このように立地や建築から、買い物弱者問題に関するサインをある程度は感じることができる。特に感じたのは、コミュニティの縮小(=限界集落化が進行する)である。

 団地は「自治会」があって、それなりにコミュニケーションの受け皿になっている。また、一定規模になると保育園や幼稚園、小学校が団地内または近隣に設けられるため、学校つながりによる横の付き合いというのも自然に起きてくる。少子高齢化やプライバシー意識によって、全盛時とは比べようもないコミュニティ活動ではあるが、それでもゼロではないだろう。
 既報では、高齢化・独居化・世代交代・空室率の拡大の進行に比例して、コミュニティ活動はかなり停滞しているという。確かにミニマム化、下手をするとゼロに近づいている可能性を、「雪かき」に見たように思う。

 筆者がこの団地を訪れたのは、東京としては珍しい積雪(1月14日)から約1週間後(1月21日)のタイミングである。さすがに都心部の雪はほとんどのところで消えてしまい、1日中陽が当たらないような場所に残る程度である。ところがここでは、日照の限られたエリアの駐車場、地区内の道路、さらには小滝橋通りの歩道、交差点まで、大量の積雪が残っていた。特に衝撃だったのは、交通量が最も多い小滝橋通りの歩道に残雪が大量に残っていたことである。陽が当たらないこともあるが、要するに歩行者が少ないために、自然融雪が起きていない。駐車場では、雪の日以来、除雪の手が入っていないクルマを見つけるのがたやすく、それだけを見ると、ほんとうに東京都心の風景なのか、不思議な感覚に陥ってしまうほどだ。同様の情景は、棟と棟を結ぶ団地内の歩行者道路でも確認できた。

hyakunin02.JPG東京都心で降雪から1週間近くが経過したとは思えない光景。 雪かきがされていないのは、①個人が集合住宅に共用部の環境維持に参加しない、②共益管理費を徴収する側に意識がない、③融雪に対して楽天的な人が多い、④降雪による不便と生活がリンクしてない(雪が解けるまで外出しない)、⑤環境維持に健康上の理由で参加できない人が多い等といった要因が考えられる。降雪は災害ではないが、雪になれない都会人の転倒事故を防止するという意味では、防災活動の一環であろうし、ならば東日本大震災で経験したように、ご近所等での助け合いが最も有効性を確保できる。それができないのは、コミュニティ活動が極端に停滞している状況、コミュニティが組織化できない現状が示されているのではないか。


hyakunin03.JPGアパート敷地内。計画的な除雪が行われた様子はない。 外見は、民間の集合住宅と連続して建設されているような戸山団地。当たり前だが掲示板にも、案内サインにも、「ここでは買い物弱者が問題があります」あるいは「限界集落化しています」などとは一切書かれていない。それでも、上記のような現象から、報道に頼らなくても、事の重大さは理解できる。
 ここは新宿という、日本を代表する大繁華街まで歩けるような場所だ。バブル期に乱開発されたといえ、団地以外にも、たくさんの住宅がある。それなのに、地方同様に少子高齢化の波が押し寄せている。当然、買い物弱者の課題が深刻化するリスクが高い。
 もはや高齢化について、都会だの地方などと分けて考えるような段階を通り越している。現在進行形で、しかもこれからの日本社会にとって切実な状況だと再認識すべきだ。繰り返すが、買い物弱者は、決して地方や中山間地域に限った問題でないのである。


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