施策・活動の提案

第1回
自動車販売業(新車ディーラー)(1/6)


事業的強者の時代は過ぎて、今は弱者と認識する
“自分だけよければ”発想の店舗施策は長続きしない
困難・弱点補い合う「相互扶助」により、顧客、社会との共栄に取り組む



このWebサイトの本店にあたる「空間通信」で、最近取り上げたテーマに「相互扶助のイノベーション」があります。相互扶助とは、お互いに助け合うことです。保険の世界ではよく使われる言葉ですが、最近は福祉分野でも唱えられています。買い物難民解消についても「相互扶助」は必要不可欠となる、基本理念に他ならないと考えます。

現在の経済社会は、強者の論理、集中・排他の論理に支配されています。強者とは、経済的な勝者であり、まさに“勝ち組”です。強者は市場を通じて、いわばカネであらゆる価値を独占するわけで、その結果、もともと中産階級が多数を占めていた日本ですが、富む者と富まざる者の深刻な格差が生まれました。最もわかりやすいのが、中央(東京)と地方の格差です。

厳しさ倍増のいま、多数を占める中小企業や団体がなんとか経済活動を続けていくには、強者に依存せず、弱者なりに前向きに助け合う関係の強化が必要です。弱者が手を組んで、相互の“弱点”を解消する、経済活動の革新=イノベーションを、商売・コミュニケーション・生活等あらゆる分野で進めたいと考えます。

人間関係(家族、血族、友人等)においても、相互扶助は、社会生活を豊かにするに大事な概念です。家族であっても個人化・別居化が進み、相互関係の維持が難しくなっています。少子高齢化が進む一方で、所得が増えない有り様で、いつまで個の力を維持できるのでしょうか?買い物難民の出現からわかるように、家族、お隣、町丁といったミニマムコミュニティで、お金を使って扶助を得られない状況でも、相互に困難・弱点を補う扶助関係の活発化が望まれているのです。経済・生活の各シーンにおける相互扶助が、買い物や生活の不便解消に結びつく、最も実効性の高い取り組みとなるでしょう。

では、「相互扶助」をどのように実現していくのか。関係する業種/業界別に、アプローチの方向性を考えてみます。各業界が担うべき買い物難民解消のためのイノベーションを提案していきます。その結果、自分の業種を見直す、他業種の弱者と助け合う、顧客との扶助的なロイヤリティ構築等で、新たな活性が生まれます。マーケティングの方向転換の示唆にもなるはずです。

絶望の淵に達してはいないものの、不安の渦中にある業種・業態ならばこそ、相互扶助の思想から、冷静に未来を考え直す決意が可能になるはずです。もちろん現在の商売活性のためにも大きなヒントになると自負します。

生活維持の前提となったマイカーの保有


第1回目は、自動車業界を着目します。巨大な業界にあって、取り上げるのは顧客との接点となる自動車販売業、いわゆる新車ディーラーです。

なぜクルマなのか。これまもう、クルマの持つ圧倒的な生活への影響力に鑑みてのことです。
生活者にとってクルマとは、移動の足として利便な道具、生活を充実させるための設備機器、ドライブやツーリングなど趣味の対象物、ステイタスを表現するシンボルなど、様々な認識が存在します。自動車の普及=モータリゼーションによって、生活の郊外化やロードサイドのにぎわいが創出されたのは、モータリゼーションの歴史が示すとおりです。
高度成長からバブルが弾け、低成長時代が続き、少子高齢化が現実となり、エコや健康など生活者の志向も大きく変化しました。クルマのあり方も影響を受けています。高度成長期、クルマは日本人の消費シンボルでしたが、現代の若い世代に欲しい商品やサービスを聞くと、クルマは番外という時代です。そもそもクルマに関心がない人が女性ばかりでなく男性にも増えています。なんと、高齢による判断力低下などを理由に運転免許返納制度を申請したのは2009年には全国で約51,000人に達して、年々増加しています(警察庁調べ)。

要らない、欲しくない、借りればよい


従来からのクルマの保有・使用の「当たり前」が崩れてしまうと、これまで見えなかった、じっと我慢してきた不都合がはっきりしてきました。クルマでどこにでも行けた暮らしから、クルマが消えると、どこにも行けない。何をしようにも自由に動けない現実に直面し、フラストレーションを溜めてしまいます。ほとほと困ってしまうのです。

戦後50年をかけて構築されたクルマ生活をリセットするなど暴挙に等しく、公共交通シフトなどの代替方法が浸透するにはかなりの時間がかかります。社会のセーフティネット構築には時間がかかります。クルマの影響力は、経済を支える自動車産業の景気を超えてしまい、都市問題、人権問題、社会(格差)問題になりつつあるのです。地域によっては、買い物難民がさらに深刻化すると見なければならないでしょう。

顧客の側の変化に対して売る側はどうでしょうか。クルマの売れない現在、ロードサイドから中古車店や整備工場などの姿が消失しています。新車ディーラーはメーカーの補助もあって、相変わらずクリンネスが行き届いたショウルームを維持できています。スクラップ&ビルド、再編が始まっているとはいえ、業界内の中古車店や異業種の飲食、物販に比べれば、まだまだ幸せな状況のように感じられます。
当事者はもちろん納得しないでしょうが、すでに弱者であると認識すべきだと考えます。弱者ですから、強者が振る舞うように、かんたんに店や人等の大事な資源をリストラすべきではありません。相互扶助を取り入れなければなりません……顧客、地域そして社会とともに。

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